スポーツ遺伝子コラム 第一回

スポーツ能力は遺伝子で決まるのか?

遺伝子のイラスト

2010年に“金メダル遺伝子を探せ”という書籍が発売されました。北京五輪銅メダリストの朝原選手の遺伝子の事が書かれており、注目を浴びた書籍です。それから8年、スポーツ能力は遺伝子で決まってしまっているのでしょうか?

 

そんなことはないと思います。

 
2016年、リオオリンピックの400mリレーでは日本はジャマイカに次いで2位でした。バトミントンや競泳、レスリングなど多くの種目でも日本は金メダルを獲得しています。では、金メダルを獲得した選手全員が同じ遺伝子で才能があったからでしょうか。

 

スポーツと関連が深い遺伝子の一つとして有名なものが「ACTN3」です。この遺伝子は2018年の日本でも遺伝子検査として広く測定されています。

 

「ACTN3」は11番目の染色体上に存在し、「αアクチニン3」というタンパク質を設計する役割を持つ遺伝子です。その役割は「速筋繊維」に働きかけ、筋繊維の強化に関与します。そのため、この遺伝子がある人は速筋繊維が多くなりやすく、スプリント・パワー系に向いているといわれます。

 

では、そうでない人はスプリント・パワー系競技に適さないので競技変更しなければならないのでしょうか?

 

私は、そうではないと考えます。

 

確かにパワーリフティングやハンマー投げのような瞬間的に大きな力を出す競技には必要な性質かもしれません。しかし、速筋繊維は誰の体にも存在し、自分の体質に適したトレーニングを行えば効率的に肥大させる事が出来ます。遺伝子検査で自分の本質を知り、トレーニング内容を変更し、体のケアや食事管理を行うことで怪我のリスクを減らし、最高のパフォーマンスを出すことができるようになるのです。

 
また、スポーツに関係があるとされる遺伝子は1種類だけではありません。人の遺伝子は2万2287個存在します。(Nature 2004)そのうちの1種類だけでスポーツ能力が決まるとは到底考えられません。スポーツに関係されると思われる遺伝子を何種類も検査し、自分の体質をよく理解することが、トレーニングを効率よく行うことや、日常生活の改善につながり、最終的に競技力向上に結び付くのです。

 

遺伝子検査ですべてが決まるのではありません。

 

あくまで自分の体質の一部を知り、今後の人生に活かす1つの手段なのです。

 

これから遺伝子検査を受けようと考えている方へ、結果が出て、「自分はスプリントタイプなのか。持久系の競技なんだけど向いていないのかな?」と考えることは遺伝子検査を本当に活用していることにはなりません。

 

確かに納得しているのであれば、種目の変更をしてもよいとは思います。ただ、これからも今までの競技を続けたいと思うのであれば「自分はスプリント能力が高い傾向にあるけど、持久系の競技をしている。ではスピードを出すことは得意ということだから、長時間そのスピードを維持する為の練習を多く行えばいいのか。」と前向きに捉えて欲しいと思っています。自分が一生懸命やってきた事に対しては、自信を持ち胸を張って欲しいと思います。

 

どんなトップ選手でも金メダリストでも人一倍の努力をしています。

遺伝子だけで自分の限界を決めつけないで欲しいと思います。
 

自分の遺伝子を最大限に生かす努力をしていきましょう。

 

 

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スポーツ遺伝子検査-森川様
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スポーツ遺伝子検査-升澤様
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